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⑪荻野神様審判
もしももしも、まだ対面していない祖母や父のご加護様に認められなくて、長谷川家が伊万里とレストランまで辿り着けなかったら?
しばしの緊張を千歳は味わったが、杞憂に終わる。伊万里と長谷川家一行がディレクトールに案内され、ウェルカムルームに姿を現した。
千歳はほっとして、朋重と『大丈夫だったね』と顔を見合わせ胸をなで下ろした。
祖母と両親もおなじようで『無事に到着したね』と柔らかな表情に崩れ、ソファーから立ち上がる。千歳も朋重と共にご挨拶へと席を立った。
いちばん最初に目が合ったのは長谷川社長だった。
渋いツイードのスリーピーススーツを見事に着こなしている姿に、千歳は目を瞠る。なんて素敵なイタリアン風イケオジ様! 品評会ではまさに牧場のカウボーイ風のチェックシャツにデニムパンツ、カントリー親父さんだったのに。ものすごくお洒落で、たぶんちょび髭もこんなスタイルになった時のための社長なりのファッションだったんだと感銘する。
そんなふうに放心状態になっている千歳を、さっそくちょび髭社長が見つけてくれ、満面の笑みを浮かべた。
「千歳ちゃん! やっと会えたな。会いたかったよ!」
品評会で出会って後、伊万里を通してれ連絡先を交換したのだが、いつからか社長は『お嬢ちゃん』ではなく『千歳ちゃん』と呼ぶように……。すき焼き食べにおいでとか牧場見学に弟君とおいでという連絡のみだったが、すっかり慣れ親しんでくれたようで、今日も気易い雰囲気をいきなり見せてくれる長谷川社長。相変わらずの大声で元気いっぱいのお父さんだった。
それでも、千歳も再会を嬉しく思い、笑顔でお辞儀をする。夫の朋重もすぐそばに並んで、同じように挨拶をしてくれる。
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