⑪荻野神様審判

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「うわ、彼女……。すごい素敵になったな」 「ほんとね! でも、もともとそれらしいオーラはあったわよ」  綺麗な黒髪に、つくりすぎないナチュラルなメイク。お父様とおなじく、仕事では牧場に心血を注ぐ素朴なカントリーガール風の彼女だったが、その堅実さが彼女から醸し出される品にもなっていたのだ。  ふと千歳は背後に控えている祖母を肩越しに見遣ると……。まだ完全に笑ってはいないが、口元が少しだけ緩んでいるのがわかった。  第一印象が良いことで、少し安心している微笑なのだろう。  父と母はそこはかとなく笑みを浮かべているが、二人でなにやら耳打ちをしている。お互いに第一印象を確認しあっているのだろうか。  そんな木乃美も千歳を見つけて、品評会で見せてくれた愛らしい笑みをぱっと浮かべて歩み寄ってきてくれた。 「千歳さん! お久しぶりです。わあ、お腹、おっきくなりましたね。今日はお姉様もいらしてくれるとのことで、楽しみにしておりました」  カントリーガールの時も丁寧な言葉遣いだったが、今日の木乃美が喋っても、それはもういいところのお嬢様そのものだった。ああ、もうこれは伊万里も虜になってるきっとと確信をしたほどだ。 「木乃美さん。私も弟についてお会いしたかったのに、この身体でお断りばかりしてしまい残念に思っていましたから、今夜はご一緒で嬉しいです」 「僕もだよ。それにしても、今夜はよりいっそう素敵ですね。素晴らしくお似合いです」  さすが、うちのお婿さんは女性への接し方がカナダ生まれのお祖母様仕込みで超上級者。栗毛のクォーターが麗しい眼差しで讃えたので、木乃美が気恥ずかしそうに頬を染めて目を逸らした。
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