⑪荻野神様審判

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 そんな彼女を知ったからなのか、伊万里がちょっと焦ったように木乃美のすぐ隣にやってきて、姉と義兄へに向かってくる。 「ちょっと朋兄ちゃん。妻の目の前で女性を褒めすぎはよろしくないのでは」 「なんで。ちーちゃんはちーちゃんで俺の中で最高だけど、木乃美さんだって素敵だったから素直に伝えただけ。伊万里君だって嬉しいだろう。彼女が素敵と言われたら」 「え……。そりゃ……。うん」  おやおや。まだ姉には本気の気持ちを報告していないからなのか、いつもはハキハキ思ったことをポンポンと喋りまくる弟が照れて口ごもっている。千歳は思わず、目の前の伊万里を見上げてニヤニヤしてしまった。  伊万里と木乃美の後に続いて、同様にグレーのスーツでお父様同様に品良く着こなしている龍介お兄様も、千歳と朋重に『お久しぶり』と挨拶をしてくれる。彼の隣には、黒のフェミニンなスーツ姿の優しげな女性もそばにいて、長谷川社長の妻、木乃美の母親だと紹介をしてくれ『初めまして、伊万里の姉、千歳です』、『夫で義兄の朋重です』と挨拶を交わした。  長谷川社長も千歳の背後で、既に祖母と両親にひとまずの挨拶を交わして初対面を済ませたようだった。  そこから、この会を準備した祖母が先導をはじめる。 「まずお席につきましょうか。そこで改めてのご挨拶をいたしましょう」  年長者の祖母の一声で、集まった一行のまとまらない挨拶が静まった。  ディレクトールの再度の案内で、レストランホールへと通される。  小雪がちらつくテラスがガラス越しにみえる窓辺のテーブルへと案内された。  大きなテーブルに、荻野側と長谷川側で向き合う形で席に着く。
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