⑪荻野神様審判

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 その祖母の威厳に圧倒されている長谷川家の空気を感じ取ったのか、最後に伊万里が堂々と胸を張り祖母に真向かう。 「今日はお祖母様と自分の家族、長谷川のご家族へと報告したいことがあります。彼女、木乃美さんに、結婚を前提にしたおつきあいを申し込みました。今後、荻野と寄り添っていく気持ちであることを彼女ともども伝えたく、集まっていただきました」 『お祖母様、お父様、お母様。お願いいたします』  二人が揃って頭を下げた。それに続くように、長谷川社長もお母様もお兄様までもがそっと無言で頭を下げてくれる。  祖母が間を置かずに、伊万里の報告に対して言葉を投げかける。 「二人の気持ちはわかりました。ですが、伊万里。わかっているね。荻野がどのような家であるか、木乃美さんは承知されているのでしょうか」  祖母に言葉に伊万里は強く頷く。 「伝えてあります。荻野は長子相続。姉の千歳がすでに跡継ぎと決まっていること。自分は次子で補佐であること。或いは、荻野に認められない者を家族とするならば、荻野を出て行くこと。彼女にも長谷川のお父様にも伝えております。なおかつ……。長子には神がつくので、その長子と神がともに認めない者は家族と見なされないことも」  迷いのない伊万里の言葉に、今度は気ままに連れてきた女性ではないことを再確認したのか、祖母も頷き返した。  そして次に祖母が視線を送ったのは、父親の長谷川社長だった。 「お父様、お母様。伊万里から聞いた話について、突拍子もないことでご納得できずにいらっしゃるかとおもいます」  黙って見ていた長谷川社長だが、祖母から切り出してきたのだからと、やっと問い返せると目つきが鋭くなったので、千歳はひやりとしてしまう。
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