⑪荻野神様審判

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「長子相続ではあることは、荻野のご姉弟と初めてお目にかかったときに聞きました。そのようなお家もあることでしょう。ですが……。長子相続以上に、総領になる条件は『神の夢を見た者』だそうですね。だいたいが長子が夢を見てきたとのこと。お祖母様も長女長子で、お父様も長子長男で、千歳さんも長子長女で、それぞれ神の夢を見られてお側についていると?」  名がある企業の経営一族が眉唾なこと言い出し、しきたりとしていることが信じられないというお顔だった。  それにも祖母は怯まずに返答する。 「さようでございます。それが荻野を繋いできた家訓で継承なのです。他の事業主さんたちからお聞きになったことはありませんか。荻野は不思議な一族――と」 「申し訳ありません。自分の事業で精一杯のせいか、そのようなお話も噂も聞き及んだことがありませんでした。ですが伊万里君と交流を始めたころ、私も失礼ながら、そちらのお家についてどのようなことを知っているかと知り合いを通じて尋ねてみました。お祖母様のおっしゃるとおり『不思議な一族で、神を敬っているせいか、縁続きになると親族として繁栄をもらえるが、一族の害になると見なされると手酷い仕打ちが返ってくる』など、教えてもらいました。噂なのか、本当なのかは、今後のお付き合いでわかるだろうという判断で、いまはあってもなくてもおなじことだと家族で考えております」  なるほど。本当のことであってもなくても、婿実家の言い分は実家だけが信じている勝手であるという認識にしたらしい。
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