⑪荻野神様審判

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 長谷川社長らしいなと千歳は唸った。媚びて聞き入れいるわけでもなく、そんなことあるかと真っ向から否定するわけでもなく。信じて受け入れるわけでもなく、でも、そちらがそう仰るならそのままでどうぞというニュートラルな姿勢をきっぱりと示してきた。  ここで祖母がふっと初めて笑みをこぼしている。でも不敵な笑みだった。強気なお父様の威勢を気に入ったといわんばかりに祖母も余裕を見せつけてくる。 「では。お父様。ここは荻野のしきたり通りにさせていただきますが、よろしいですか」 「長子であるお三方が、娘を荻野の家の者として認めるかどうか、長谷川と縁続きになるかどうかの品定めということですね。どうぞ。構いません。ご勝手にされてください。ですが自信はあります。どこにだしても上等の娘です。それに万が一、娘が認められず、伊万里君が荻野を追い出されても。長谷川の家で彼を引き取らせていただきます。むしろ彼ほどの婿を縁切りで放り投げてくださるほうが、彼を息子にと望む私としては万々歳ですがね」  うわー、うちの最強お祖母ちゃまに対して負けていないって凄い!! 千歳は面食らっていた。朋重も隣でハラハラしている。でも向こう側にいる父に母はまだ真顔のまま。強い姿勢で向かってくる長谷川社長に負けじと伊万里の両親としての威厳を保っているようだった。 「では遠慮なくいかせていただきます。長子三代の判断を」  祖母が賽を投げる声を張る。  なんだかんだ言って、長谷川社長も神の一声を待つように姿勢をただし覚悟を決めた顔つきになった。  伊万里も木乃美も、テーブルの下で手を繋いでいるのが見えないけれど伝わってくる。  千歳も朋重と一緒に背筋を伸ばす。 「千歳。跡継ぎ長子として、見定めを――」 「はい。お祖母様」
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