⑪荻野神様審判

9/10
前へ
/916ページ
次へ
 千歳は木乃美と伊万里へと視線を定める。  伊万里の緊張する眼差し、木乃美の恐れている眼差しと千歳の視線が合う。その二人を見据えて、千歳ははっきりと告げる。 「私は認めます。初めてお目にかかった時から、愛らしい方だと感じておりました。また気立ても優しく、無垢で純粋な空気しか感じません。あの時からずっと好ましい気持ちのままです。荻野と生きていけると思っております。私の神様は長谷川のお家をお気に召したご様子でした」  姉の返答に伊万里の表情が和らぎ、木乃美もほっとした微笑みに崩れ、弟と見つめ合っている。長子ひとりめクリアだった。 「遥万(はるま)。家長として、見定めを――」 「私も異存はありません。さきほどが初対面でしたが、一目見た時から綺麗な光をまとっております。これほどのお嬢様は滅多におりません。息子のお相手として勿体ないほどです。素晴らしいお嬢様です」  父もここでやっと笑顔になる。母もだった。いつものほわっとしたママの微笑みになって『伊万里、良かったわね』と声をそっとかけた。あの伊万里がちょっと涙目になったのだが、ぐっと唇を噛みしめて堪えたのを見てしまう。  だがまだ最難関の縁神様付きの祖母がいる。  その祖母へと皆の視線が集まる。 「では。荻野家、長老の私から」  集うテーブルに張り詰めた空気が漂う。窓辺の雪が降る音が聞こえてきそうなほど……。  祖母が口を開く。 「荻野の長老としても、よきご縁と見定めます。縁神様がようこそと歓迎しております」  やっと祖母が、千歳も伊万里もよく知る優しいお祖母ちゃまの顔で微笑んだ。 「祖母ちゃんの、縁神様が……?」
/916ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5115人が本棚に入れています
本棚に追加