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❄・🍪😇☕・❄
『まあ、なんてことでしょう。最高の珈琲と、うちらのバタークッキーの相性のよいことよいこと! あのがやがやした若者ばっかりの店でなくて正解でしたな! マスターとやら、気に入りましたぞ! ああ、でも。おかわりほしかったわ~。けど、赤子のためにかふぇいんとやらを、とりすぎは駄目ってことで我慢しましたわ~』
フレンチを食べているときも、カフェでコーヒーを味わっている時も、大人しくして出てこなかったのに。
その日の夜にまた千歳の夢に登場してきた。
福神様、私の子供が導いてくれたのですよね――と脳内で問うのだが。
『それはどうかしらね。内緒だわよ~』
扇子で顔を隠して、またふいっといなくなってしまった。
目が覚めて、千歳はちょっとふて腐れていた。
知っているだろうに濁して去って行くばかりの福神様。もしかして、おそばに、まだ生まれる前の私の子がいて仲良く遊んでいるのではないのかと。
そこで千歳はふと、自分が胎児だった時の記憶はあるだろうかと思いを巡らせたが、そんなものはあるはずもなく……。母が教えてくれた『ママと呼べばいいの』という問いかけも記憶にはない。おなかの外へと産まれたら忘れてしまうものなのかもしれない。
でも。産まれるまで、荻野のご加護様のそばに胎児だった自分の魂がいて、一緒にお喋りをして遊んでいたのかなと想像してみたりする。
千歳の場合は父に付いている聖女様になるのだが、でも聖女様は母・凛香にそっくりだから、やっぱり母そのものなのかもしれない。
美しい女神様とおしゃべりをしていた日もあったのかもしれない。
だったら、いまは石狩の海で福神様とこの子は遊んでいるのかな……。
そんなことを頭に思い浮かべると、なんだか楽しくなってきて、千歳はまた微睡んでいた。
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