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「やだ。木乃美さんったら。それって私が食べきれないだろうと心配してくれているの? たとえ、野菜炒め作っていても、サンドが大量に持ち込まれても、ぺろっと食べちゃう魔女だって知っているでしょう」
「でも。まだお食事には気を遣いますよね」
いつも気遣いをしてくれる木乃美に、千歳は『いまは栄養補給大事だから大丈夫』と笑い飛ばした。
そのあとすぐだった。今日は眼鏡をかけている木乃美の目線が、千歳が使おうとしていた『野菜炒めの素』へと止まった。
「これ……」
開けて放置していた商品パッケージの箱を手に取った木乃美が、少し青ざめた顔で眺めている。
急に表情が変わったのでどうしたのと聞こうとした千歳だったが、木乃美に声をかける前に彼女がリビングへと戻ってしまう。ハンドバッグからスマートフォンを取り出して、箱を片手になにかを調べはじめた。
伊万里も婚約者の様子が気になったのか、そばへと歩み寄る。
「木乃美ちゃん。どうかした?」
「伊万里さん、これ。今日、お姉さんがお昼に使おうとしていたみたいなんだけれど……。昨日かな。ネットニュースで見た覚えがあって……」
調べがついたのか、木乃美が慌てて伊万里にそのネットニュースを見せた。
「これ自主回収対象になってるじゃん。姉ちゃん、これ使わない方がいいよ」
え……。さっと血の気が引くような感覚を千歳は覚える。
衝撃を受けている千歳に気がついた木乃美も慌てて追加情報をくれる。
「でも。万が一、食しても健康に害はない――とありますよ。それでも会社の検査基準に満たさないものだから生産方針として回収するとあります」
「あー、これ。きっと中に入っている具材で、土とか使わない屋内栽培のやつがあるから、使っている栽培素材の一部が収穫の時に混入したんじゃないかな~」
「えー! やっぱり妊娠中のお姉さんには食べてほしくないじゃない」
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