⑮ちぃちーちゃんのお墨付き

2/5
前へ
/916ページ
次へ
「そうなんだよね。お母さん、天然っていうか、変なことばっかり言いだすでしょう。私もその類いかと思ったんだけれど、自分が妊婦になって母親と同じ体験しちゃうと、お母さん自身が聖女さんのご加護を受けてるんじゃないかって最近は思ってるんだよね」 「長子が男児だったら、加護のある女性を引き寄せるってことかな」 「朋重さんもそう言っていたの。だから、どちらが生まれても、きっと荻野らしい子が生まれるって、不安になっている時にそんな考えで慰めてくれてね。自分でいうのもなんだけれど、ほんとうに神様が付くのかしら、とか、神様付の長子を育てられるのかとか思っちゃってね」  また千歳がため息をほうとついて肩を落とすと、伊万里と木乃美も心配そうに顔を見合わせた。 「姉ちゃんは、長子のプレッシャーを子供のころから受けてきたもんな。神さんがついていて、それを人に隠して、でも夫には理解してもらおうと戸惑いながらの見合いと結婚だったんだもんな……。俺も、神さんはついていないけれど、理解しがたい荻野の家訓にしきたりのこと、木乃美がどう受け止めるかすごく緊張していた。きっと姉ちゃんは常にこんな状態だったのかなと初めてわかったんだ」  長子でなくとも、家の事情を結婚したい女性に伝えるのは、伊万里もかなり思い悩んだ様子。それだけ、木乃美に対して真剣だったということが窺える。  姉の千歳から見たら、弟はいつまでも小学生ころから変わらない無邪気な弟だったのに……。しんみりと語る弟は、今日は頼もしい大人の男。いや、最近、婚約したからなのか、木乃美のために落ち着いた男になろうと努力している様子が伝わってくる。そのおかげなのか、木乃美からも絶大な信頼を得ているようで――。
/916ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5112人が本棚に入れています
本棚に追加