⑮ちぃちーちゃんのお墨付き

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「さっき姉ちゃん言っていたじゃん。店の窓にべたべたと熱弁をするようなチラシを貼っていたんだろう。あれって、低レビューに対する言い訳だったんじゃねえの。特にコーヒーの質がわるいって。2丁先に、知る人ぞ知る高齢バリスタが経営する上質カフェがあることだって知っていただろうしさ。若い客層しかいなかったのも、結局は中年層を向こうに取られちゃっていたってことだろう」  伊万里の分析にも千歳は唸る。  確かに。お洒落な壮年男性が『客層ってあるね。自分はマスターのお店が落ち着く』と言っていたことも思い出す。 「常太郎パパが気に入るのなら、よっぽどの店だろう。よし、木乃美ちゃん、明日行ってみよう」 「ほんとうに? 楽しみ!! 父が気に入ったなら間違いないもの!」  そこで婚約者同士でいちゃいちゃとひとつのスマートフォンを覗いてはしゃいでいるので、千歳はそっと目線を外して、ひとりで野菜ハムサンドを頬張る。  だが伊万里が最後に呟いた。 「ちぃちーちゃんのお墨付きなら、間違いないな」  すっかり、私の子が信頼されちゃったみたいなんですけれど?  でもお腹の子がまた、叔父ちゃんの声が聞こえているのかぐるんぐるんと動くのがわかった。嬉しいのかな?  きっともう。あなたには神様がついているよね。神様が教えてくれたんだよね? 出産間近、子供が夢を見たと教えてくれるまでがとても待ち遠しく思える千歳だった。
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