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いつもの彼の体温がすぐに伝わってくる。そして彼に千歳は柔らかな声で伝える。
「大丈夫よ。だって神様が付くんだもの。ちゃんと神様が教えてくれるの。『千歳、私のことは内緒だわよ』、『千歳、〇〇をしてみなされ。いいことあるわよ』、悪い考えやひねくれた考えを持っても『その気もちはわかるけれど。もう少し考えてみようかな』、『その考えは捨てなされ』って教えてくれるの。だって最強の相棒がそばにいるんだもの。この子の神様も……、そばにいて『一緒に育ててくれる』のよ、きっと。私が福神様にまっすぐに育ててもらったように」
最強の守り神がついている。
それに気がついた朋重がやっと顔を上げてくれる。後ろにいる千歳へと振り返ってくれ、いつものように優しく抱き込んでくれる。
「そうだった。神様がついていれば、最強だったんだ」
「その代わり……。お力を貸してくれるお手伝いはしなくちゃいけないけれどね。福神様に言われたの。『千歳は私と通じている力を持っているかわりに、その苦労をしなくちゃいけないよ』と――。でも大丈夫。だって、私……いま、しあわせだもん」
最初は『信じる』ことに戸惑いを見せていた朋重だったけれど、いまは『ほんとうにあること』として信じてくれるようになった夫。
そんな男性に出会えたのも、荻野のご加護様のおかげ。こんな素敵な婿様が父親になる覚悟を本当の意味で考えてくれること。このうえなく、有り難く幸運なことだから。
そうだ。千歳もやっと心が決まる。私も母としての覚悟を決めなくちゃ――。もうはちきれんばかりのお腹を撫でて、朋重の琥珀色の目をみつめる。
「この子の成長を、行く末を、あなたとならきっと守っていけると私は確信しています」
夫も綺麗な色の瞳で、千歳をまっすぐに見つめ返し微笑んでくれる。
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