⑯いつもそばに

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『塾やら、大変よなあ……。そうだ。ふっかふかの肉まんを食べてからいきましょ!』  雪が降りしきる中、下校してからすぐ塾に向かう道で福神様が話しかけてくる。 『遠慮せず、みっついきましょ。みっつ!』 本当なら十個いけますけれど……。 『満腹になると眠くなりますからな。ここは我慢でみっつ!』 【熱いシェフ】というコーナーがあるコンビニに入るなら、千歳はフライドチキンを食べたいのに。 『にっくまん、にっくまん!』  しゃんしゃんと鈴の音を鳴らして踊り狂う福神様を見ていたら、千歳もすっかり肉まんの気分になってしまったり……。 『雪が降る日は、揚げ鳥より、ふかふかほかほかの肉まんですぞ!』  仕方がないなと思いながら、母から腹ごしらえにともらったお金で肉まんを三つ買う。  コンビニのイートインで頬張る時も、福神様もふくふくした笑顔で『おっほほ。おいしいですな! あったかいですな! 雪の季節のおたのしみですな~。元気になりましたかな?』  身体があったまってお腹もすこし埋まって、美味しい気もちになって……。そして、いつも声をかけてくれる福神様と頬張るおやつの時間に心も温まって――。 『がんばりましょうな』と脳内で一緒に食べて喜んで、励ましてくれた。  そんなことも急に思い出す――。  なんだかちょっと泣けてくる。  いつもそばにいてくれる『おじさん』で、そう振りかえれば千歳を育ててくれた『おじさん』でもあるのだから。  長子という使命を背負っても、清く正しく保つことが厳しいことであっても、その教えを守れば福神様は間違いなく導いてくれてきた。
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