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母の返答に、娘に神がついているかは確定したわけじゃないと千歳は思い知る。まだ自分の中で『神がついているか心配』な気もちが残っていたのだと自覚して項垂れた。
そんな千歳の気持ちも構わずに、『でもね』――と、母が急に照れた顔を見せる。
「やっぱりあなたのパパもおなじこと言っていたわと思い出しちゃった。遥万さんにその話をしたら『聖女様がお腹の子と遊んでくれていたのかもしれない』と優しい笑顔で聞いてくれたの。その笑顔が素敵で、いまも忘れていないわ」
いつもの惚気かなと思ったが、茜の中で笑む母はほんとうに美しく聖母そのものだった。
「だとしたら。産まれる前の子を、親に付いている神様が付き添ってくれていたのかもしれないわね。千歳の時は聖女様が、千咲ちゃんには福神様が……。守ってくださっているのなら、今度は私たちが大事に育てていかないとね」
茜の中の母はとても清らかな笑みで、ベビーコットに眠っている千咲を見下ろしている。
そんな母のおおらかさを見ていたら、千歳も心が落ち着いてくる。
そうだ、信じて待つしかない。娘が、千歳と福神様が出会ったころの年頃になるまで、その神様がちゃんとお側にずっと付いてくれていたのか、娘が告げてくれるまで……。
「かわいい。孫ってほんとうにかわいく感じるのね。千歳と伊万里が小さい時を思い出して、なお愛おしくかんじるわ。あなたたちもかわいかったけれど、お孫ちゃんもひとしおね……。ふふ、こんど、かわいい肌着をいっぱい持ってくるわね」
すでにお祖母ちゃん愛を発揮させはじめていて、千歳も嬉しいやら、どこまで発揮されるかで心配やら……。しかも母、美魔女だから、ちっともお祖母ちゃんに見えない。娘ながらもさらなる不思議な気もちにさせられて複雑だった。
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