⑲ちぃとりぃ

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「りぃちゃんとおそろいになったから、お父さんに見せてくる」  長女の千咲も無邪気な笑みで、パパの元に走って行く。  次女千里の愛称は『りぃちゃん』になっていた。ママが『ちーちゃん』、お姉ちゃんが『ちぃちーちゃん』。自分だけ『ぃーちゃん』と聞こえない『せんちゃん』なんて嫌だと次女が泣きわめいてから『だったら、りぃちゃんな』とパパが呼び始めてから定着した。 「みてみてパパ、おねえちゃんとおそろい」 「ちぃが桃色で、」 「りぃはあお!」  リボンがついている靴下をはきおえた姉妹が仲良くならんで、お互いの足をみせあってきゃっきゃと嬉しそうにしている。  そんな娘たちを、また朋重が嬉しそうにスマートフォンで撮影をしていた。  やがて娘たちが揃って『パパ、お父さん』と栗髪の朋重へと抱きついていく。  千咲は長子教育が既に始まっているので、ふだんはお利口さんの顔を整えているが、妹の千里と一緒にいると子供らしくなることがある。  そんな娘を眺めていると……。千歳もやっぱり自分はあんなふうな子で、伊万里がそばにいるときには『子供同士』として、いつまでも素の自分でいられたことも思い出していた。  娘たちも、そんなお互いをお互いに認め合って支え合える姉妹になってほしいと願っている。  袖口にかわいいフリルがついたチュニックTシャツに、ストレッチデニムのパンツ。そしてお揃いのリボンが付いてる靴下。動きやすいお洋服で支度が調った娘達の関心は『もうみんな到着したかな』、『もうBBQをするお庭に行こう』とこの家から出掛けるタイミングだった。  千歳も仕事かたわらにテーブルで娘たちと夫を微笑ましく眺めていたが、手元に置いてあるスマートフォンに着信表示、着信音が聞こえてきた。表示は伊万里。
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