⑲ちぃとりぃ

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『姉ちゃん。俺らも到着したよ。川端のおっちゃんと恭太君と準備に取りかかるな。木乃美と万季人がそっちに迎えに行ったから、準備整うまでそこで待たせてあげて』 「うん、わかった。火を起こすんでしょう。あぶないから、子供たちはこちらに集合させて、まとめて連れて行くよ」 『またジョーパパがでっかい肉を持ってきたからさ。特製のローストビーフも昨日から仕込んでくれたみたいだし、俺と姉ちゃんの三ポンドも持ってきてくれたよ。各三枚……』  すっごい親戚ができたもんだと千歳も嬉しさで飛び上がりたくなったのだが、それより前に頭の中にぴょこんと福神様が出てきた。 『さすがですな! 和牛の主、長谷川殿!! 三ポンド! 千歳、ぜったいに、私そっくりの絵がついている黒麦酒で頼みますぞ!』  すでにナイフとフォークを両手に持っている福神様が頭のなかでころころ転がっている。それどころか『タコ天! 漬け鮪! 焼き蟹! 帆立! ローストビーフ! 三ポンドステーキ! おはぎ、おはぎ、お・は・ぎ!!』とずっと連呼しているので、千歳は苦笑いが浮かぶばかり。  しかし哀しいかな。福神様のリクエストとその期待に存分に応えられるこの体質は母親になっても健在……。その信頼も万全なのか、だから余計に福神様ははしゃいでいるのだ。 『伊万里が到着したよ、木乃美ちゃんと万季人君が一緒に来るよ』――と伝えると、朋重と娘たちも『みんなきたきた』とはしゃぎはじめる。  しばらくすると、元気な男児を連れてきた木乃美が到着する。  窓を開け放している庭から入ってくるのもいつものこと。 「千歳お義姉さん、こんにちは。今日もおじゃまします」 「おじゃましますっ。おばちゃん、おじちゃん、こんにちはっ」
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