⑲ちぃとりぃ

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 千咲と千里の姉妹の間に挟まれるように産まれた男児、伊万里の長男『万季人(まきと)』も、既にお馴染みの伯母宅別荘へと元気よくあがりこんでくる。ただいま四歳。ともに幼稚園児。  通う園は異なるが、いまも伊万里一家とは親しくして行動を共にすることも多い。姉家の姉妹と万季人は三姉弟のようにして仲良くしている。 「ちーちゃん、りぃちゃん! パパがバーベキューの火をつけていたよ。もう行こうよ」 「まきくん、火つくのみたの? ねえ、お姉ちゃん、いまりおじちゃんが火をつけたって、いこう!」 「うん。りぃ、まきくん。行こう行こう。ジョーじいちゃんも来てるの」 「うん! じいちゃんまたでっかい肉を牧場でじゅんびしてたよ。ぼく、いっしょにみたんだ。おっきいいかたまり。パパとちーおばちゃんがいっきに食べるからって」  子供三人わいわいと騒ぎ始めたかと思ったら、そのキラキラとした視線がまだパソコンに向かっている千歳へと一斉に向かってきた。 「おばちゃんとパパ、すっげえもんな」 「うん、おっきいの平気でどんどん食べちゃう」  万季人と千里というちびっ子コンビから注がれる期待の眼差し……。まるでショーで頑張る珍獣を期待しているようで、千歳は毎度、遠慮なく食べられるチャンスと心躍らせつつも、なんだか子供たちにそんな姿を見せていいのかと気恥ずかしくもなる。 「でも、しょうがないよ。だって、わたし、ジョーおじいちゃんのところ以上に美味しい牛肉、食べたことないもん。長谷川のお肉が一等賞、最高だもん」  長子の千咲が胸を張って豪語したので、そこで大人三人子供三人の間で笑いが起きて賑やかになっていく。
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