⑲ちぃとりぃ

8/8
前へ
/916ページ
次へ
 日常では相変わらずメガネをしている木乃美が、そんな千咲のそばに行き、姪っ子を愛おしそうに抱きしめてくれる。 「美味しいものがどれかよくわかる千咲ちゃんから、うちの牧場和牛が一等賞という保証済みで嬉しい。ジョーおじいちゃんも、すっごく喜んでいるんだもの」  結婚してからも清楚な奥様でママの木乃美に抱きしめられて、千咲も嬉しそうだった。  そんな微笑ましい親族触れ合いを眺めている千歳も、とても満ち足りた気持ちになる瞬間だった。  木乃美はまさに良妻賢母といいたくなるほどの妻、母となっていた。  夫と子供を第一として動き、実家も義実家も大事にする。伊万里の畑も手伝うこともあるが、実家の仕事にも変わらずに携わっている。  出会ってすぐに結婚を決めた伊万里だったが、『姉ちゃんと神さんのおかげだわ。あの時俺も、ここだいまだ、これがナチュラルな感触ってびびびってきたもんね。おかげで、俺、もう~木乃美しか考えられないっ』というほどに、木乃美といればいるほど惚れてしまうのだそうだ。  千歳自身も自分の感触を確かめつつ決めた見合い結婚だったが、ある意味、祖母と自分のインスピレーションに導かれたスピード婚約。弟も、姉の導きに従って良かった良かったと、ますます荻野としての生き方を大事にしてくれている。  つまりは。次に千歳と伊万里が大事にしていかねばらないのは、長子長女の千咲が無事に夢をみたと告げた日が来たならば――。  千咲を跡継ぎとして、姉弟そろって、ほかの子供たちにも協力していく生き方へと教育していかねばならないということだ。  朋重も木乃美もそこは重々承知してくれている。
/916ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5115人が本棚に入れています
本棚に追加