⑳末広がりBBQ

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⑳末広がりBBQ

 神社近くの石狩別荘から、子供たちを連れて川端家まで。  漁港近い川端家の庭がBBQパーティー会場だ。  海と浜辺、そして船が揺れる港が見えるそこで、空や海の青さと潮風を感じての親族食事会は、いつも賑やかになる。  うきうきの子供たちは、姉妹と甥っ子とそれぞれ朋重と手を繋いで、なにから食べたいかのお喋りに夢中。千歳は木乃美と女同士のお喋りで盛り上がりながら、和気藹々と楽しんでいるうちに川端家に到着した。  庭に着くなり、大好きな朋重伯父ちゃんとお喋りをいっぱいしていた万季人が走り出した。その先にはポロシャツにデニムパンツにエプロンをしているちょび髭社長がいる。 「じいちゃん! ちぃちゃんとりぃちゃん、連れてきたよ」  元気よく飛びついてきた孫に、ちょび髭社長の目元が緩む。 「お、万季人。もうすぐ肉を焼き始めるから、お皿をもって、あっちのテーブルに、ちぃちゃん、りぃちゃんと座って待ってな」  黒髪の小さな頭を、トング片手ににこやかに撫でる長谷川社長。そんな彼の目線が娘をみつけ、さらに、そのそばに控えている千歳と朋重へと止まると、また満面の笑みを見せてくれる。 「千歳ちゃん、朋重君! ひさしぶりだな」 「ご無沙汰しております。長谷川社長」 「おお、朋重君。あいかわらずの男ぶりだね~」 「ジョーさんが気に入ってくださった俺のスモークサーモンサラダ、タコのカルパッチョも持ってきましたからね」 「それそれ、楽しみにしていたよ。川端家のタコ天も最高だもんな。今日は俺も食うぞーーーと気合を入れてきたんだ」  夫との挨拶の次は千歳とばかりに目が合うと、今度の社長は興奮気味に歩み寄ってきた。 「千歳ちゃん! 持ってきたからな、今回も俺の最高傑作を三ポンド!」
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