⑳末広がりBBQ

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 浦和、義実家の一行が到着する。 「毛蟹と刺身盛り、持ってきたよ」 「こんにちは。ひとくち筋子もいっぱい持ってきたわよ」  義兄夫妻、秀重と桜子義姉もやってきた。  さらに浦和の義両親も、両手一杯の荷物を持って掲げている。  正貴義父も、孫たちを見つけると嬉しそうな表情に崩れた。 「子供たちに塩バニラアイスも持ってきたんだ。当社名物のソフトじゃなくてカップのほうだけどな。ソフトクリームの機械を持ってこられたらよかったんだけどな~」 「お父さんったら、子供たち専用で機械ごと準備しそうな勢いだったのよ」  正貴義父も小さい孫たちのためならなんでもしそうな好々爺で、会食の度にあれこれ準備を楽しんでいるようだった。  そして。千歳と朋重が出会ったころは、うっすらとした影を湛えて無口だった菜々子義母は、いまは笑顔を絶やさない姿を見せてくれるようになっている。 「浦和のおじいちゃんとナナばあちゃまだ」  大好きなお祖父ちゃんお祖母ちゃんが来て、千里が目を輝かせる。  まだ小さな千里が駆けてきて菜々子義母にだきついた。もう義母も嬉しそうに千里を抱きしめてくれる。 「みて、ばあちゃま。このまえいっしょにかったリボンの!」  りぃが足をちょこんと出して見せると、菜々子義母は『あら、やっぱり素敵。かわいいわね』と、しあわせそうに微笑んで千里の小さな頭を撫でている。そのそばで、正貴義父もにこにこして、一緒に千里の頭を撫でてくれる。  秀重義兄夫妻の子供たちは大きくなり、高校生と大学生に。長男家の子供と次男家の子供は歳が離れているせいか、再度ちいさな孫たちに慕われて、浦和の義両親は『また賑やかで愛らしくて、楽しい日々』と余生を謳歌しているようだった。
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