5106人が本棚に入れています
本棚に追加
/916ページ
特に千歳は、菜々子義母が穏やかに日々を過ごしてくれている様子を見ると嬉しくなる。義母にはもう二度と、親族で苦心することはないようにしていきたい。
浦和の甥姪もそれぞれの学生生活で忙しくしていて、たまにしか会食には来ないが、叔父朋重と叔母千歳とも親しくしてる。『おいしいものを食べたくなったら、千歳ちゃんに会いに行けば間違いない』と言われて、甥、姪単独で会いに来てくれることも多い。
最後に荻野家当主が到着。
千歳の父・遥万、母・凛香。そして今日は珍しく着物ではなくカジュアルなパンツスタイルの装いにしている祖母・千草も到着した。
こちらも両手一杯の箱を持ち込んで来た。
「こんにちは。みなさんもお揃いですね。もういい匂いが車を停めたそこから漂ってきていましたよ」
「孫ちゃんたちー。荻野のおやつをいっぱい持ってきたわよ。プリンにおはぎに、ケーキも」
荻野のお祖父ちゃんお祖母ちゃんの登場にも、小さな子供たちが湧いた。
「こんにちは。今日はひぃばあちゃまもおじゃまいたしますね」
千草祖母が現れると、先に到着していた男達の背筋が伸びる。孫の伊万里以外。同じ会長様でも、浦和の義父ですら姿勢を正すのはいまもかわらなかった。あの長谷川社長も同じ、千草祖母には畏れを抱いて敬う様子をみせる。
「おばあさま、お疲れ様です。こちら、お席を準備しておりますよ。ゆっくりしてください」
俊敏な長谷川社長が、すぐに椅子を準備して伊万里のそばへと促した。
「ばあちゃん、エビ好きだよな。秀重義兄さんが持ち込んで来てくれたから、俺、焼いてあげるな」
「あら、伊万里。ありがとう」
孫のそばにおいておけば安泰とばかりに、なぜか長谷川社長がほっとした顔をみせたのも面白くて、千歳は密かに笑いを抑えている。
最初のコメントを投稿しよう!