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「きたきた、千歳ちゃん。これよ。こちらはお客様用で、こっちが千歳ちゃん伊万里君用のお皿ね」
川端氏妻の亜希子がキッチンでいろいろな盛り付けをしながら出迎えてくれる。
大盛り皿がふたつ。どちらもおなじように盛られているのに、ひとつは千歳&伊万里用として準備してくれるところは、さすが川端家、『心得てくれている!』――と千歳は飛び上がる。
しかもさらにミチルがにんまりしながら、そばにビールを入れたグラスを出してくれる。
「お先にどうぞ」
「えー、なんか私だけ先にいただいちゃうなんて。ちょっと行儀悪くないかな~」
「なんて言って。絶対にもう我慢できないでしょう。福神様も!」
ミチルが取り分け皿にタコ天を一枚のせてくれ、川端家特製のタレをさっとかけてくれる。
さくさくに揚がったばかりの大きなタコ天と、黄金色のビール。もう千歳は頬が緩んで仕方がない。
『いきなされ、いきなされ! さあさあ、千歳。これはわたしのための一枚ですぞ!』
そうだね、そうだよね! これは伊万里と五枚ずつのうちには入らないよね??
「えっと、では。お先に一枚、いただいちゃいます」
どうぞどうぞと、川端家のお嫁さんたちが勧めてくれる中、千歳は手をあわせて、感謝の念を込める。
「海の幸、お酒の恵をいただきます」
必ず祈るように合掌をする千歳のことを、川端家のお嫁さんたちは微笑ましそうに見守ってくれている。
箸を手に取って、大好きな川端家タコ天を千歳は頬張る。
ほくほく顔で噛みしめて、そこにビールを一口含んで飲み込む。
「んーーーー! やっぱりタコ天はここのおうちのが最高!」
『おっほほーー! ここのタコ天は天下一ですな!!』
千歳も福神様も同時に叫んでいた。
『千歳、麦酒をもう一口! 黄金の麦酒もいいですなあ。タコ天ももう一枚!』
「福神様も喜んでるーー」
『おっほっほー! よきかな、よきかな。美味日和かな!』
福神さまのほっぺがぷっくり膨らんでいる『ほっくほく顔』が脳内にひろがる。
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