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㉑神様のお花見
束冴はつまんだ花びらを、千歳へと差し出してくれる。
「あら、ハマナスの花びら? 風で入ってきたのかな? 私のお洋服についていたのかしら」
「ここ奥にあるから風で入り込んでこないし窓を開けていないし。それに、貝殻とかシーグラスとか落ちているときもあるんだ」
そんな束冴が神棚へと目を向けた。
「母ちゃんも父ちゃんも、祖父ちゃんも祖母ちゃんも、ひい祖母ちゃんも。みんな、神様の仕業だからそっとしておきなさいって言う」
覚えがある千歳はやや『ひやり』としながらも、神様の大胆さに驚きをかくせない。でもこの子に見つけてほしくてなにかをしているのだろうか?
「だから。おばちゃんが来たら、俺、なにか落ちていないか探すようになっちゃったんだ」
「そ、そうだったの~」
「千歳ちゃんは不思議な人って母ちゃんとばあちゃんたちが言うんだ。俺もそう思う。びっくりするぐらいに大食いだし」
「あはは~。あれなんでだろうね。姉弟で一緒だから体質かな? 遺伝かな? ご先祖様にも大食い姉弟がいたのかな~」
もう笑って笑って誤魔化した。なのにじぃっと見つめてくる大人びた子の眼差しに耐えられず、千歳は目線をそらした。
いや、千歳もわかっていた。勘でわかる。この子は聡い子だと。小学生男児だからと誤魔化せない知性が既に備わっている子だと感じている。
「束冴君、拾った貝殻とかどうしているの」
「集めて取っておいているんだ。花びらとか葉っぱは押し花みたいにしてる。千歳おばちゃんに見せようと思って。なにかの落とし物かなって」
「そうなんだ。あとで見せてくれる?」
「あの……、おばちゃんに返さないとだめ?」
あ、それを気にしてくれていたのか。千歳もそう悟った。
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