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「神様がついているからと油断してはいけません。神様がそばにいるからこそ、清く正しく、人々の手に福を渡していく役目を全うする精神を大事にしていきましょう。この四家の力をそろえて。乾杯――」
流石、千草祖母。気が引き締まる厳かな乾杯だった。
でもそれで親族と親しい家との絆を油断せずに丁寧に大事にしていこうという気もちも改まる。
だからこそ、また皆で楽しく盛り上げようと空気も高まっていく。
「ほーら、千歳ちゃん、伊万里君。金賞和牛の三ポンド、フィレステーキだ。遠慮なくいってくれ!」
長谷川社長に促され、彼のそばに準備された席で、千歳と伊万里は並んで座る。
姉弟でナイフとフォークを持って顔を見合わせる。
「ふふふ、いっちゃおうか、伊万里」
「いっちゃお、いっちゃお。食べる魔女と弟の俺が食べれば、また福が舞い込んでくるんだから」
姉弟揃って、まずは手を合わせて『戴きます』のお祈りをする。
北国の初夏の風を感じて、潮の匂いを感じて、草花の匂いを感じて……土の匂いも感じて。この世界の恵を感じて。
「いただきます!」
「いっただきまーす!」
何歳になっても、結婚しても、それぞれ家族を持っても、千歳は伊万里と一緒に大口を開けて、大きくカットしたフィレステーキを頬張る。
「んーーー! 長谷川のお肉、最高!!」
「んーーー! ジョーパパの肉、世界一!!」
『んーーー!! 長谷川殿の肉に勝るものなしですな!!』
千歳が頬張った途端に、ほっぺぷっくり顔の福神様が再び登場。
『あ、私だけ楽しんでたらいけませんな。縁さん、保食神さん、聖女ちゃんにも味わってもらわねば!』
ふっと福神様が消えてしまった。
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