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㉒純白のおしるし
パーティーお開きのあとは、お片付けのお手伝い。
男たちは外の設営の片付け、女たちは川端家の大きなキッチンで食器洗いなど。
会長、社長、ご当主組、ご夫人たちの年配組には、リビングでお喋りを楽しんでもらう。
片付けが済んでも、川端家のリビングでは再度の酒盛りが始まっている。
浦和水産の会長、社長、副社長。荻野製菓の会長、社長。長谷川精肉の社長。川端家ご当主の洋太氏、息子の恭太。この面々が揃うと、仕事の話で盛り上がるのも恒例だった。
子供たちは大広間でお昼寝。千咲と千里、万季人に、いちばんちっちゃい男の子、ミチルの次男も一緒に。つきそいは木乃美に任せた。
一番兄貴の束冴はそんなお年頃ではないので、お父さんとお祖父ちゃんのそばに座って、大人たちの話を興味津々に聞いてる姿が、千歳にはまた興味深く目に映った。
キッチンでミチルと一緒に食器を洗っている千歳はふと呟く。
「束冴君って、落ち着いているよね。すごく大人びて感じるんだけれど」
「そうなのよね。もっとヤンチャに育つのかなと思っていたんだけど。あ、もちろん、男っぽいものには興味津々なんだよ。パパがサーフィンしているから、自分もやりたいって言っているし。お祖父ちゃんの漁船に乗るのも大好きだし、漁の仕掛けの話とかも興味深そうに聞いているしね」
「大人の仕事の話とかも、すごく理解した顔で聞いている気がするんだよね。あ、それから……」
束冴が教えてくれた『神様の落とし物』について、千歳に話してくれたことは、母親のミチルには知らせておこうと口を開きかけた時だった。
「お母さん……」
川端家のキッチンに、眠そうな目をこすりながら長女の千咲が入ってきた。
「あら千咲。目が覚めちゃったの」
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