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妹と従弟と川の字で眠っている姿もかわいくて、伊万里と朋重がこっそり忍んで写真撮影に出向いていたから、気がついて目が覚めてしまったのかと千歳は思った。
「これ……。手に入ってたの」
娘が握った小さな手を、千歳へと差し出してきた。
なにを握っているのかと、千歳は首を傾げた。
彼女がぱっと開いた小さな手、そこには白く光る小さな粒がひとつ。
一瞬で千歳は息をひく――。
身に覚えがあって、そして、『その時が来た?』という緊張だった。
娘の目の前へと、千歳は床へと跪く。そして、千咲の手の中にあるものをもう一度よく確認をする。
そっと指先で触れると、間違いなく『真珠』だった。
「千咲。これ、拾ったの? 落ちていたの?」
「ううん。目が覚めたら手に入っていたの」
「手に、入っていた?」
同じだ。自分があの大広間で体験したことと同じだった。
つまり……? でも、それだけ? 千歳がさらに娘に問いかけようとしたが、千咲から告げてくる。
「すごく冷たい手の黒い髪の女の人が、千咲のものだから大事にしてねって……。夢を見たの。それで目が覚めたら、ほんとに手に入っていたの」
千歳の心臓が早鐘のように打つ。
既視感がある出来事が、娘にも起きた。
千歳は落ち着こうと深呼吸をして、もう一度娘に問う。
「どんな女の人だったの?」
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