㉒純白のおしるし

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 厳かな空気を纏っている祖母と、神様の夢を見たばかりの娘が、また神棚へと向かっていく。  その姿を朋重と見送っていたのだが、朋重がはたとなにかに気がついた顔をする。 「保食神は、この漁村では『漁業守護、航海安全の神』だけれど、食を司る神でもあったよな。だからなのか? 千咲が妙に食の品質を嗅ぎ分けるのは……」 「そう言われると。確かに。私みたいな大食いではなさそうだけれど、ダメな食材や衛生的に危ない食材は大人より嗅ぎ分けるものね」 「質が低い店だと入りたがらないもんな……」 「千咲が嫌がったら、食べない方がいいというバロメーターにもなっちゃっているもんね」  娘が見せ始めていた不思議な力も、保食神様のおかげだったのかと、夫妻で納得の瞬間――。 「遥万お義父さんにも知らせなくちゃ。みんなが揃っているしちょうどいい」  千歳よりも朋重のほうが嬉しそうに、親たちが集まっているテーブルへと向かっていく。  千歳より先に親たちに報告する朋重。彼も彼なりに、荻野の人間として神様が子供につくがどうか案じてくれていたのだろう。でも、妻で、跡取り長子の千歳のほうが心配と不安を見せていたから、彼は夫として千歳を支えるために余裕を見せてくれていたのだろう。いまになって千歳は、彼の本心を知り噛みしめる。感謝しかない。そして、彼も荻野の人間として生きてくれていることがわかる姿だった。  今日は、縁続きの家同士で集まり、そして神様たちも楽しんでくれただろう素晴らしい一日。  そんな日に、娘に神様が付いてくれた『お知らせ』が届いた。  リビングでは親族だけで共有している『不思議な一族の節目』の報せに湧いていた。  その光景を見て、娘が授かった真珠を胸に握りしめ、千歳は万感の思いで目を瞑る。 「千歳、こちらに来て皆さんに詳細を――」  父に呼ばれ、千歳は親しい人々の輪に加わり、娘が神様の夢を見たことを伝える――。 ※明日こそ、最終回!
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