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「パパ、かみさまのおれいってなに」
「今日、ひぃばあちゃまも言っていたね。神様もパーティーをしているって。そのこと?」
娘たちの無邪気な問いに、麗しい琥珀の目を輝かせるパパが優しく教えてくれる。
「そうだよ。荻野のお菓子、浦和のお魚、長谷川のお肉、川端漁師さんのお料理。それを集めると神様が集まって、ここで宴会をしてくれるんだよ。だから時々集まって、皆で神様とご馳走を食べるんだ。これはその御礼がママに届いたんだな。きっとそこの神社の神様だ」
『そうなの!』――と、娘たちはそろって目を大きく見開いて、またまじまじと紅の花びらを見つめている。
「このお花を集めよう。お皿にのせて眠る時にそばにおこうか。いい匂いで眠れるかもな」
「おはなのかおりで、ねるの!」
「素敵!」
パパと娘たちが、千歳のまわりに散らばっている花びらを集め始める。
次女の千里がちいさな身体をまるめて一生懸命に集めている姿をみて、千歳は驚きの衝撃からふっと心がほぐれてくる。
栗毛のパパとお姉ちゃんの千咲は、お洒落なガラスの器を一緒に選んでいる。夫も娘たちも、千歳の身になにが起きても、日常の一コマのようにして自然に一緒に過ごしてくれている。この幸福な一瞬を、福神様が見せてくれた気にもなってきた。
ガラスの器にハマナスの花びらが集まる。その器を持っている千咲が、朋重を見上げて呟いた。
「お父さん。今日はご馳走の日だから、千咲のところにも、神様が来てくれたの?」
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