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①完璧な姉
休暇日に姑の芹菜義母と買い物から帰ってきたときだった。
小柳家での留守番を任せていた姉の百花が、甥っ子を抱っこしたまま項垂れていた。
「なんか、もういやって……。こんなにおもったの、はじめて」
うつろな目で生気のない表情で呟く姉の姿に、柚希は愕然とする。
いわゆる産後鬱。なんでもできる姉がその一歩手前まできていたことをやっと自覚する。
姉の百花は頼りがいがある姉御気質。
母が他界した後も、まだ未成年だった柚希を女性として支え守ってきてくれた『母代わり』でもあった。
父親を見習って、小学生のころから武道に没頭し『自衛官になる』とまっすぐに生きてきた女性。
制服姿は凜々しいし、ヘリコプターパイロットとしての迷彩服姿もかっこいい。プライベートでの長身を活かしたクールなファッションは、海外モデルのよう。そんな姉が様々な男性からのアプローチをはね除け(時には進退をかけ体当たり)、数ある男の中から信頼を感じ選んだ男性が『東 心路』義兄だった。自衛隊では後輩で下官となる年下男性。
義兄の心路は、習志野の第一空挺団に所属していた将来有望な隊員。2、3年に一度は転属になるという異動が激しい職種の宿命を背負いつつ、遠距離恋愛となっても男女の仲が途切れなかったふたりだ。
その姉と義兄が結婚を決め、つぎは『子供がほしい』という段階で、手堅い姉夫妻は計画妊娠にて子供を授かる。
パイロットである姉は身体に負担がかからないよう妊娠ができるタイミングを叩き出し、産休育休を夫とともに過ごせるような転属まで考えていた。
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