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札幌で心路義兄と産休育休を共に過ごせるようにと、姉夫妻が考えていた計画が『ふたりそろって札幌市内駐屯地に転属』だった。
第一空挺団にいる心路義兄は、札幌での勤務中に真駒内駐屯地で取得できる『冬季遊撃幹部レンジャー』の資格取得を試みる。
その間に、姉は実家で出産という運びになる。
なんでもそつなく完璧にこなして生きている姉、百花。
その姉、百花が、柚希が住まう小柳家のリビングで頭を垂れてうつむいていた。
ソファーがあるそこで産まれた子供をだっこして、『もういや』と吐いた後はうつむいて微動だにしない。
帰宅したばかりの柚希と芹菜母は買い物袋を持ったまま、顔を見合わせ困惑する。だがすぐに動いたのも芹菜母だった。
買い物袋をリビングのドアを開けたそこに置くと、義足をつけている足でも、しっかりとした足取りでソファーへと向かっていく。
子供を抱いている姉のすぐそばへと、芹菜母が座り込んだ。
「ももちゃん。疲れてるのよ。ママとユズちゃんが『一路くん』を見ているから。少し横になりなさい。ゆうべもあまり眠っていないでしょう」
「でも、一路がいつも泣いているみたいで気になって眠れない」
「このソファーで横になりなさい。ここにもベビーベッドを置いているんだから。一路くんが見えていたら安心でしょう」
芹菜義母の諭しで、やっと姉が甥をママの手に渡して、身体を横にした。
「ユズちゃん、お願い」
「はい」
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