①完璧な姉

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 芹菜義母は義足を付けているときはまだ心許ないからと、甥っ子の一路を移動させるときは他の家族に頼むことが多い。それもあるが、いつもは気丈な姉が弱っているので、女親代わりの自分がまずは娘のそばにいるという心積もりのようだ。  姉の背をいつまでも撫でて、『あったかいお茶をいれてあげるわね』と優しく微笑みかける。  芹菜義母の腕から柚希も自分の腕へと甥っ子をしっかりと抱いて、ベビーベッドへと向かった。  一路が産まれた時は家族中がてんやわんやになったが、喜ばしいことで賑やかだった。  姉への恩返しとばかりに、柚希も子育てのことを勉強して、産休中から姉のサポートに徹した。  そのうちに、姉とおなじぐらいにはお世話ができるようになった。でしゃばらない程度に、姉の様子を見て『私が見てるよー。やるよー。ここはまかせてー』と任せてくれる分だけ手伝ってきた。  おかげさまで。まだ子供はいないが、赤ちゃん抱っこも慣れたし、おむつ交換できるし、ミルクも作って飲ませられるし、最近は離乳食作りも楽しんじゃって、食べさせることも……。だからなのか、甥っ子は柚希にはとても懐いてくれていた。いや、家族全員が一丸となってお世話をしてきた。夫の広海だって、あたふたしながらも叔父ちゃんとしてのお世話を頑張ってくれていた。だから一路はみんなに懐いている。  それでも姉の百花がすんなり頼れるのは妹の柚希が一番のようで、いまも妹の手に息子が委ねられたからか、やっとソファーに横になって目を閉じてくれた。 「あら、荷物をほったらかし。ユズちゃん、はやく冷蔵庫に仕分けましょう」
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