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百花姉が寝息をたてたのを見届けて、買い物から帰ってきた女ふたりで急いで買ってきたものを片付け始める。
リビングはキッチンからも眺められるので、姉も一路の様子もわかり安心。そのまま小柳家のリビングで姉は休息をしている。
買ってきた食材の下ごしらえを芹菜義母と始める。
葉物を茹でたり、お肉に下味を付けて冷凍庫に入れたり。その作業を義母と並んでしていると、芹菜母がふっと小さく呟いた。
「モモちゃんは凄く完璧主義なのね、きっと。あの繊細なまでの精神の研ぎ澄まし方、あれぐらいじゃないと、パイロットにはなれないってことなのね……。しかも幹部さんだから責任感も強いんだわ。でも、子育ては完璧じゃなくていいと、母親が全部しなくちゃいけないとかじゃないからね……。そんな気もちになるようにしてあげないと……」
芹菜義母の言うとおりだった。
柚希もそう思っている。姉は頼りがいある姉御だが、いまは姉御じゃなくていいのだ。でも『モモねえ』はそうして生きてきたから、なかなか気を緩めることができない質に磨かれて過ぎていた。
「この育休中にすこし楽になってくれるといいんですけど」
柚希もほうれん草を洗いながらふとため息を吐いた。
だが今度の芹菜母は、ふっと小さな笑い声を落として微笑んでいる。
「でも。嬉しいわ。ママを頼って、私がいる家のリビングを訪ねてきてくれていたんだものね。あと少しかしら」
姉は出産後、日中は小柳家のリビングで過ごすことが多くなっている。
柚希が仕事に出ている日は、芹菜母と一路と三人で過ごしていることもよくあるらしい。
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