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なんていうのだろう。姉、初めて女性としてコンプレックスを発揮していると言えば良いのだろうか。
美人だし優秀だし、性格だって明るくて強くて申し分ない。ただひとつ。『男勝り』すぎて、本来でいうところの『女性らしい志向』までは備えていないのだ。
ジェンダーレスが叫ばれる時代だからこそ、姉のような女性でもパイロットとして起用されているわけだし活躍できている。
いや、『女性らしさ』という言葉は姉がそう感じているだけで、ここでは不適切かもしれない。
いわゆる、モモねえは『かわいいものは皆無、料理は適当』なのだ。
この二世帯住宅でともに姉夫妻と生活をするようになったころ。最初のころは姉も『凄い。芹菜ママのような女性らしいコーデのおうちって憧れだったんだ』とたいそう喜んでいた。
しかも、母性全開、女性らしさ満載の芹菜母に触れて、姉も久しぶりに母親のような女性らしさに触れられて、とても嬉しそうだった。
産休中は芹菜母と柚希と一緒に、女同士で買い物に行けることも楽しんでくれていた。
そんな姉が徐々に変化していったのは、やはり出産後だ。
ある日、柚希にとっては実家になる隣世帯の神楽家で過ごしていた時。そこのキッチンで父と一緒に『神楽家用のつくりおき惣菜』をこしらえていた時だった。
新生児の一路をだっこして、ダイニングテーブルで休んでいた姉が呟いたのだ。
『やっぱさ。こっちの家って男所帯だよね。キッチンが殺風景』
言わんとすることはよーくわかる。柚希だって結婚前、広海と芹菜母が二人きりで住んでいたマンションに初めて訪問して、キッチンをお借りしたときの感動を忘れていないからだ。
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