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「……ねえ、ユズちゃん。そろそろ、心路君にちゃんと相談したらどうかしら。モモちゃんに知られないように。ちょっと思い込みが激しくなってる気がするのよね。里帰り出産とはいえ、モモちゃんにしたら、お母さんと暮らしていた慣れ親しんでいる実家がなくなって、新しい環境になっている実家は、やっぱり『環境激変』だと思うのよ。新しい家族になった私たちだって、いきなり他人と同居みたいなものでしょう……」
姉の里帰り出産と期限付き同居育児は、最初の頃は楽しく過ごしていたが、いまはそうではなくなった。姉にとっては、環境激変でストレスだらけだったということになる?
自分がしあわせな結婚生活、同居生活をしているだけに、そこに姉を無理矢理連れ込んでしまったのは妹の自分なのかと心苦しくなってきた。
「ひとまず……。今日の洗濯物をモモちゃんに届けてくれるかしら」
「はい。様子見てきます」
一路君の肌着やベビー服にタオルなど。こまごました洗濯も芹菜母が手伝ってくれている。たたみ終わったそれらは専用の籐かごに入れてあったので、柚希はそれを持って実家宅へ向かった。
一軒家だが中心に内廊下があり別棟風の設計になっている。
その廊下を歩きながら籐かごを見つめる柚希は『こんなお洒落な籠をさらりと使っていることも、お姉ちゃんは気になっちゃってるんだろうな』とため息を吐いた。
小柳家のドアから出た内廊下。そこの窓からは、芹菜母が手入れしているガーデンが見られ、季節の空気を感じることができる。庭は続きになっているので、義母のガーデンは神楽家の庭と玄関先まで続いている。
その玄関先に小型のジープ車が駐車されていることに柚希は気がつく。
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