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だた最近は姉を見ているともどかしいばかりなのは確かだった。
『そろそろ心路君と相談をしては』――と案じていた芹菜母の言葉を思い出し、柚希もいまだとばかりに思い切ることにする。
「お姉ちゃん……。いまは全部を一人でやりこなすのは無理だよ。お姉ちゃんがなんでもできる女性なのはわかってるよ。でも、いまはそうじゃないと思う。もちろん、お姉ちゃんと心路義兄ちゃん夫婦の邪魔はしたくない。邪魔にならない程度に、でも、お姉ちゃんの力になりたいよ。頼って欲しいよ」
姉もそれはわかってくれていると感じている。
だが姉はうつむいたまま無言だった。そしてその向かいでまた、心路義兄がため息をついているだけで、彼もまたなにも言わない。
再度、沈黙が漂う。柚希の言葉はなんら効果はなく、響きもしなかったようだった。もうなにを言ってよいのかわからない。というか、ここにいる意味は? 姉に呼び止められたからここにいるけれど、ほんとうに柚希はなんの役にも立たなそうなのに?
しかしそこで、やっと姉が薄笑いを浮かべながら口を開いた。
「違うんだよ、柚希。私がね、いま苦しいのはそれだけじゃないの」
妹に頼らずに母親の自分だけでなんとか頑張りたい。でもいまはそれはできない――。それが姉のもどかしさだと思っていたが、そこだけじゃないと姉が言いだした。
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