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うんうん。そうだそうだ。なんだ、さすが心路兄ちゃん。柚希と芹菜義母が相談したかったこと、心持ち、ちゃんと備えているし、姉にも伝えているじゃん! あとはこの夫の気持ちに姉が素直にもたれかかれること。そうあるべきと柚希も姉に進言しようと口を開きかけたのだが――。
「でもさ!!」
また姉が鬼気迫る目つきで、心路義兄に食ってかかってきた。
「心路は厳しい訓練ばかりしているんだから。自宅ではくつろいでほしいんだよ! これから幹部としてもっと責任が重くなって、いつなにがあっても、なによりも最優先に出動しなくちゃいけないんだから。家にいるときは身も心も休めてほしんだよ! 家にいるのに寝不足で部隊に出勤とかしてほしくないんだよ! しかもさ。私はさ。そこらの女性らしい奥さんより手が届かなくて、がさつで、殺風景な家庭しか作れそうにないのにさ。せめて、ゆったりできるようにしてほしいから、一路の世話は私ができる限り――」
え、姉……。そんなこと考えていたんだと、『妻』としての愛満載から起きる気持ちが余計に追い詰めていたと柚希は知る。そんな姉の本心に驚愕していた隙に、今度はあの優しい心路義兄の目が鬼のようにつり上がっていた。
こちらの表情も柚希には初めて目にしたものだったので、ゾッとした。その瞬間――。空気が震えたかのような怒声が響いた。
「違うだろ!!!」
柚希は戦慄く――。あわあわして狼狽えるだけになっていた。
心路義兄の形相が、姉や父が本気で怒った時の顔より怖い。鬼瓦と言いたくなる。え、やっぱり心路義兄は荒々しい鬼のような武将みたいな本性を秘めているんだ!? と震え上がっていた。
姉も穏やかな彼に吠えられて、顔面蒼白になっている。
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