5114人が本棚に入れています
本棚に追加
特に空挺団にいた義兄の声は大きく通る。
そのせいか、奥の部屋から赤ちゃんの泣き声が聞こえてきた。
ママとパパが声を張り上げていたので驚いたのだろう。
当然、姉と義兄もハッと我に返った表情で寝室へと振り返り視線を向けた。
だが柚希からさっと動く。
「私が見てくるね」
一路が泣いているベッドルームへと急いだ。
ここで止めたら駄目だと思ったのだ。せっかく姉と義兄が本心をむき出しにしてぶつかり合っている。やめてしまったら一度引っ込めた本心はまたなかなか顔を出さなくなるかもしれない。気になる息子は叔母の柚希がひとまず見ておくから、姉夫妻にはここで全て吐き出して欲しい。そう思って急いだ。
ベビーベッドで泣いている一路を見つけ、柚希はさっと抱き上げ胸に抱くと『よしよし』と、ちいさい丸い背中をぽんぽん叩いて、抱っこをして揺らしてあげる。ぐずぐずしているが声はすぼんだ。
子供は妹がそばにいるからと心の枷が取れたのか、キッチンでの夫妻の向き合いが再開する。
一路をだっこしたまま部屋から廊下に出た柚希は、キッチンが見える影で遠巻きに見守る。
紫紺の制服姿のまま、心路義兄はテーブルをバンと大きな手で叩いた。
最初のコメントを投稿しよう!