④自衛官を守るのは……

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「自衛隊だって、せっかく技能を習得して経験を積んだ隊員をひとり失うのは損失なんじゃないですか。いまは入隊する若手も減っているんですよね? それならば余計に貴重な人材だと思うんです。他の隊員と兼ね合いを摺り合わせて、どのようなケースなら百花さんが一路君を置いて出動できるか、または一路君を優先して家庭を守る側に回れるかを決めておくべきだと思います」  淡々と進言をする広海に、まだ廊下の影に甥っ子だっこのままで隠れている柚希も視界が開ける思いだった。 『モモ姉ちゃんが思い詰めちゃってる。なんとかしなくちゃ』とやつれた姉の姿に右往左往していて、結局、夫の心路義兄も、妹の柚希も、おなじように狼狽えて視野が狭まっていたことになる。  広海は妹の夫という、一歩引いた立ち位置になるからまだ落ち着いた所見が打ち出せたのかもしれない。  さらに広海は、彼だからこそ見えていた訳も話し始める。 「生意気言いますが……。自分が勤めている荻野製菓では女性が会長で、後継者も孫娘と決まっているせいか、女性優位での環境が他社より整っていると感じています。女性が結婚、出産、育児とステップしていく過程でも、どのように働いていけるかということは手厚く保証していける試みをしています。自衛隊で女性がどこまで融通をきかせてもらえるかは、民間企業にいる俺にはわからないのですけれど。同じように男性社会の組織でも定着してくれたらいいなと……。女性自衛官の義姉を持った義弟として願っています」
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