④自衛官を守るのは……

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「偉そうなこと言ったんだけど。家族になったから――とは、ちょっと違うんですよね。なんていうか。障害者である母ひとり、息子ひとりでひっそりと暮らしていたところ、元レンジャーのお義父さんにぐいぐい連れ出されたとたんに、世界がくるりと変わったといいましょうか。同僚で距離があった後輩の柚希とも、そのおかげで良い結婚ができて、母との関係も良好。こんな賑やかで毎日が楽しい新しい家と家族ができて。頼もしい元自衛官のお義父さん、現役自衛官のかっこいいお姉さんと、男ならすげえと尊敬しかない第一空挺団のお兄さんができちゃって……」  今度は広海が辛い時を思い出したのか、物憂げに眼差しを伏せる。 「ほんとうに。母とふたり。結婚もせず、なんとかふたりで生きていこうと、あの時こそ、俺も母も世界が狭まっていたんです。それを勝お義父さんと柚希が連れ出してくれた。母はいまでも嬉しそうに思い出話をするんです。小樽のトラットリアで偶然出会ったお義父さんと柚希とシェアするランチをしたこと。そのあと水族館まで連れて行ってくれたこと。あの時、ふたりは母のことを、両足が揃っていたころの母のままに接してくれたんです。元自衛官のお義父さんの身軽な行動力、明るさ。母と共に恩を感じているんです。だから今度は俺と母が、自衛官の家族として力になりたいです」  それが今日、広海が姉夫妻の言い合いに遭遇して意を決して間に入った訳でもあったようだった。 「柚希。こっちおいで」  甥っ子をだっこしたまま影で伺っていた柚希へと、広海が声をかけてきた。
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