④自衛官を守るのは……

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 姉夫妻もそこに妹と息子がいるとわかっていても、そっとしてくれていると承知してそのままにしていた。でも、夫の広海が姉夫妻の心を解きほぐしてくれ、姉たちも落ち着いたようなので、柚希も再度キッチンへと足を踏み入れる。  一路をだっこしたまま、夫の広海の横へと柚希も寄り添う。  黒のスリーピースのスーツの彼が、そのまま柚希の肩を抱き寄せた。 「百花姉さん、心路兄さん。一路君をいつでも俺と柚希のこの家で預かりますから。長期でもOKです。まだ子供はいませんけれど、もし、俺と柚希に子供ができても、その後も一路君も我が子同様に大事に預かります。パパとママが遠くで働いていても、俺と柚希がきちんとお父さんお母さんの愛情も大変さも伝えていきます。一緒に育てていきましょう。お二人だけで頑張らなくても大丈夫ですよ」  それが夫の『自衛官の家族になる覚悟』であって『恩返し』でもあるんだと柚希は初めて知った。  そんなことは話し合ったことはない。姉の子供を預かるなんて安請け合い、本来なら軽々しく言えるものではない。それでも。話し合っていなくても、柚希も広海が言っていることには賛成でおなじ心境だった。  彼が柚希と気もちが通じ合ったように抱き寄せてくれるまま。甥っ子の一路をしっかりと抱きしめて柚希も伝える。 「お姉ちゃん。一大事のときには、私と広海君にも任せて。一路のこと、私も守るよ。自分の子と一緒に守る」  いちばん信頼してくれているだろう妹からの言葉に、姉がまた泣き崩れたが……。最後は椅子から立ち上がって、嬉しそうに柚希のところへと来てくれる。
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