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柚希の胸元で指しゃぶりをして大人しくしている一路と、百花姉の目線が合った。百花姉が手を伸ばすと、するりと一路はママの胸へと行ってしまった。やっぱりママがいちばんだよねと柚希もほっとして、甥っ子を受け渡す。
「柚希、広海君。ありがとう。ギリギリまでやるよ。パイロット。遠慮せずに甘えられる時は甘える。またお国を護るため、がむしゃらに行くよ」
やっと姉らしいかっこいい笑顔を見せてくれた。愛おしく抱きしめた息子のほっぺにキスをして笑っている。そんな時の姉は、女性らしいママさんの麗しさも見せてくれるようになっている。
明るくなった姉夫妻が一路を挟んで幸せそうな姿も見せてくれる。
柚希も夫に感謝しながら、広海と笑顔で視線を合わせた。
ほんとうに素敵な旦那様で、自分も幸せだな~と胸が熱くなって感動していたのだが――。グズグズとした妙な音が聞こえてきた。
今度は玄関側の廊下、ドアからだった。
柚希だけじゃない。広海も、百花姉も、心路義兄も、揃って音が聞こえるほうへと視線を向けていた。
そこから現れたのは、ぐしゃぐしゃな顔になって泣いている父の勝だった。
「ぶああ~。だめだ~。聞こえちゃったかー。だってさ、帰ってきたら、広海君がすんごい嬉しいことを~。元気なかったモモに~。そんなふうに、自衛官の娘と婿のこと想ってくれていただなんてさーーーー!!」
玄関から帰宅したところで、娘たちと婿たちの絆が結ばれる話し合いを目撃して涙腺崩壊していたようだった。
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