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柚希も、父が結婚式に招待された時にお供したことがあり、その時から顔見知り。この家ができた時も新築祝いに、結婚したばかりの奥様と、息子さんと、息子さんの育ての親である男性と訪ねてきてくれた。
奥様の寿々花さんも自衛官で音楽隊隊員。愛らしい奥様で、義理の息子になる拓人君とも仲が良く、複雑な家庭環境だと聞いてはいたが、育ての父親である岳人さんも交えて、仲睦まじいファミリーを構築している方々だった。
拓人君と寿々花さんはたまに本店に買い物にきて顔をよく合わせているので、年齢が近い柚希は『久しぶりにゆっくりお話できそう』と嬉しくなったのだが――。
「え、館野……君、がくるの……」
「え! 館野教官がくるんすっか!?」
自衛官のふたりが真っ青になっていた。
「うん。おまえたちの出産があったから遠慮してくれていたけど、館野一家はうちにはよく来てくれていたからな。とくに拓人君が芹菜さんのお料理が好きで、ケーキを焼いたりなんだりするんだよ。父の日はもう恒例かな。そんな気構えるなよ~。館野だって、プライベートではただの館野なんだからさ~」
でも自衛官二人は震えていた。
「だって、あの 館野殿、だよ!」
「そうっすよ、お父さん!! 俺が冬季課程受けるときの教官!!!」
「あの笑わない男がうちにくるの!? 気難しくてヤダ。しかも、あの人、私のことさ……」
なんで? 館野さん、すんごく綺麗なお顔の素敵なお兄様なのに。イケダン、イケパパ、イクメン、すべてが揃っているうえに、ぜんぜん優しいお兄様なのに?
柚希は首を傾げたが、自衛官の姉と義兄は、元教官の父に『なんで呼んだの』、『俺の立場どうするんですか』と本気で食ってかかっていた。
そんな姉と館野三佐は同期らしい。
互いに美男と美女で、防衛大学の同期間では有名で、それなりに顔見知りだったのだとか……。
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