⑥微笑むあの人

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 そのせいもあるのか。もとから気構える相手なのか、姉の百花は『館野君が来るなんて』とずっとそわそわしているし、心路義兄なんか『こえー、こええよ。あの館野三佐がプライベートで遊びにくるなんて? 遊びに? え、どう接したらいいの俺……』とあわあわと恐れている。  こんなところ、変な意味で自衛官だなと柚希は感じている。  柚希にとっては『かっこいいイケメンパーフェクトお兄さん』で、いつも優しく接してもらってきたからだ。  そんな館野一家が神楽・小柳家に到着。インターホンが鳴って、待ち構えていた父・勝が嬉しそうに出迎えにいく。  柚希もキッチンを芹菜義母に任せて、夫の広海と一緒に出迎えに玄関へ。その後ろから、一路を抱っこした姉と心路義兄が緊張した様子でついてくる。こんな姉もまたもや珍しいなと思うほどだった。同期ってそんなに気を遣うもの? 同じ釜のメシで連帯感が強いのが自衛官とイメージしていた柚希から見たら不思議な感覚だった。  すでに玄関エントランスがとても賑やかになっている。  元レンジャーの父も声が大きくてよく通るので『いらっしゃい。よく来てくれた。久しぶりだなー!!』と騒々しいぐらいだった。 「おじゃまいたします。神楽教官」 「ご無沙汰しています。遅れましたが、お嬢様のご出産おめでとうございます」  私服だがそこに爽やかな面差しの男性と、愛らしい女性が並んでお辞儀をしていた。男性の胸元、腕には小さな女の子がいる。館野夫妻とそのお嬢ちゃんだった。 「おおお、清花ちゃん。またおっきくなったな。寿々花さんに似てきたのかな。かわいいなあ~」
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