⑥微笑むあの人

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「あ、やっぱり寿々花に似ていますか。俺もそう思ってるんですよ。もう小さな寿々花ってかんじです」  爽やか三佐が、にっこにこの笑顔で黒髪の女の子を愛おしそうに見つめている。女の子もパパと目が合うとにっこにこ。かわいいペパーミント色のワンピースを着ていてご機嫌さんだった。  柚希も赤ちゃんの頃から知っている女の子だったので、しばらく見ないうちに赤ちゃんぽさが抜けてすっかり『お嬢ちゃん』になっていたので笑顔になる。  だがそんなほのぼの柚希の隣で、姉が茫然としていた。 「館野君が、笑ってる……」 「な、なに言ってんのお姉ちゃん。この前から……。いつもの館野さんじゃん」  だが姉が妹の柚希に妙に食ってかかってきた。しかも困惑気味にだ。 「ユズは一般人だからわからんのかもしれないけど、館野は恐ろしい男なんだよ!」 「わ、モモさん落ち着いて! 同期でも、いまは三佐……呼び捨てダメ!」  心路義兄も今日は落ち着きない……。広海までそんな義姉と義兄を見て困惑気味。 「なんか、この前からお姉さんとお兄さん、どうしちゃったんだろなあ」 「そうなんだよ。同期なのにどうして? 顔見知りのようだし、おなじ駐屯地で勤めていたこともあるみたいだし。心路兄ちゃんの慌てぶりはわかるよ? 三尉と三佐だから……」  夫の広海と一緒にひっそりと囁きあっていたら、女の子をだっこしている館野三佐が、談笑していた父の背後にこちらの娘夫妻が二組出迎えに来ていたことに気がついてくれる。 「柚希ちゃん、広海君。久しぶり。今日はまたお世話になります。会えること楽しみにしていたよ」
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