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美形の微笑みに、柚希もつい、今日も素敵だなあと頬を熱くしてしまう。でも嬉しくて笑顔を返す。
その館野三佐が柚希の隣にいる姉と目が合ったと思ったら、急に意地悪い笑みを浮かべて、姉に敬礼をした。
「よう、モモタロウ。元気そうだな。ママさんになったんだな。おめでとう」
「うっさい! その呼び方やめろ!!」
え、モモタロウってなに??
柚希も広海も一緒になってギョッとして、しかも今日まで『館野君』とか『館野殿』とか『館野三佐』と丁寧に呼んでいたのに、急に呼び捨てにするわ、いつもの気強さで言い返すわで、姉の妙な拒否反応には訝しいばかり。
父もちょっと困った顔をしているが、そこは元上官故か、うまく同期生の間に入り込んでくる。
「百花、落ち着け。今日の館野は三佐でもないし、心路君にとっての教官でもないし、ただのただの、デレデレパパで夫だからな。おまえたちと一緒。惚気合戦でもしてちょうだい」
「お父さん、聞いたでしょ! 館野君、防大時代から、私のことこうやって呼ぶの! どこがモモタロウじゃ!!」
姉が気強くムキになればなるほど、館野三佐が涼しい微笑の面差しで受け流している。
でも。なんでそんな呼び名? 妹の柚希が唖然としてると、また館野三佐が柚希には素敵な微笑みを見せて教えてくれた。
「お姉さん、防衛大時代に鬼退治したんだよ。だから、俺ら同期の間では、モモタロウって呼んでるんだ」
「だから、そういう話は父や妹の前でしないでって言ってんの」
「なんだよ。照れるなよ。名誉な呼び名だろ。鬼退治したんだからさ」
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