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もう心路義兄も茫然として立ち尽くしていたのだが……。兄ちゃんまでもが『三佐が俺に笑ってくれた』とか小さく呟いたかと思ったら。
「ありがとうございまっす!!! 三佐!! 俺の自慢の妻でございます!!!」
もの凄い大きな声で胸を張って敬礼。でも空気が震えたと感じるほどの凄い声だったので、そばにいた柚希と広海はのけぞってしまったし、子供ふたりが揃って泣き出してしまったのだ。
「おい、心路。声、でけーよ! 一路が泣き出しただろ!」
「うっわ。ヒガシ、声でかい! だから今日の俺は三佐じゃなくて、教官でもなくて、遊びに来たただの教え子だからさ。そんな、ここ演習場じゃないんだから。よしよし、びっくりしたな。清花」
でもその隣で奥さんの寿々花さんは余裕で笑っている。
パパの腕から、女の子が『ママ』とお母さんの胸元へと移っていく。
「仕方ないじゃない。将馬さん、三佐の時はほんとうに怖い顔をして冷たい人なんだもの。そう見えるだけだけど。それだけ、後輩さんたちに恐れられているってことじゃない。今日は優しくしてあげてね」
「え、俺、いつも優しい男だと思っていたのに……」
奥様に言われて館野三佐がちょっとしょんぼりした顔を見せたのも珍しいのか、百花姉と心路義兄が『館野三佐じゃない』と後ずさっていた。
そんな仲睦まじい館野夫妻に遅れて、小柳家の玄関ドアが再度開くと、また人が入ってきた。
荷物を持ち込んできた背が高い男性と男の子が一緒に訪れる。
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