⑧しあわせのカタチ

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「もうね、いまは一緒にドライブしたり旅行に行ったりしてるんだ。将馬お父さんが長期出張の時は、パパと先生が『うちに』寿々花ちゃんの手伝いにきてくれるんだ」 『うちに』――という言い方がひっかかった。それは芹菜義母も、父の勝も同じように感じたのか、表情を一瞬止めていた。  今度は父から教え子の館野三佐へと問いただす。 「もしかして……。いま拓人君は館野のほうで暮らしているのか」 「はい。岳人君が美音先生と、その、同棲を始めたといいますか。もちろん、拓人は岳人君宅に泊まることもありますよ。好きなように行き来させていましたが、最近は我が家にいることが多いです」  館野三佐が『実父』だと拓人君自身が理解するようになってからも、これまでどおり育ての父である岳人パパと暮らしていたことは柚希も知っている。  常に近所に居を構え、拓人君と清花ちゃん子供ふたりの子育ては『三人親』で携わってきたが、いまは『四人親』で見ているとのこと。  父もこれまでは、複雑だった関係も良好な家族関係を築けて安心、とくに子供第一であってあっぱれと言いたいようだった。  それでもだった。ほんとうに『四人親』が続けられるのか? 岳人パパが女性と同棲をしているということは、結婚を見据えているだろうし、今度は岳人パパに血縁の子供が誕生する可能性も――。柚希の中にすぐに芽生えた不安は、夫の広海にも通じたのか、彼もすっきりとしない表情を柚希に見せてくれている。でも自分たちが案じて口にしてよいことではない。  そこに言及できるのはやはり、父と芹菜義母だ。 「じゃあ、岳人君はいずれは先生とご結婚を――ということなのかな」 「同棲されているなら、そのつもりということなのよね?」
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