⑧しあわせのカタチ

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「互いに『結婚』については、以前の結婚生活で煮え湯を飲まされた――という感覚しか残っていないんです。俺も彼女も、あの『形』に嫌な思いしかなく、その共感もあって一緒にいられるようになったとも言えます」  それだけ以前の結婚には嫌悪感しかなく、結婚が必ずしも『幸せになれる完璧な形』とは思えないとのことだった。  でも。岳人パパが美音先生と話合って、それで上手く暮らせているのならそれがいちばんいい形なのだと柚希にも伝わってくる。  自然体で愛しあいたいということなのだと、柚希には思えた。 「子供も、互いに持つつもりはないんです。彼女、出来にくい身体で、それで離婚されていますから」  その報告にも、神楽・小柳家の一同は言葉を返せない状態になる。  そこまで話し合っていて『二人だけのスタイル』で生きていこうと決意した同棲というだとわかったのだ。  誰もが出会って、恋して愛して結婚をして出産、小さな家族が増えて幸せになる――。その道筋だけじゃないことを、柚希はいつも、こちらの館野ファミリーに会うと思い知らされるのだ。  なさぬ仲だった男同士が、子供のために協力をする決意をしたこと。実の父親だと判明しても、育ての父親のところで、思う存分暮らしていいよと、拓人君の気持ち第一で協力してきたことも。なかなか出来ることではない。  そして。岳人パパの新しい恋愛、その決意も。よくある一般的な生き方ではない、男と女の生き方もある。柚希は今日もそれを目の当たりにしている。
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