⑧しあわせのカタチ

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 しあわせな報告が、またパーティーを盛り上げてくれる。  さらに食事が進み、それぞれ席を移動して気になる人とのお喋りも尽きない。柚希は岳人パパと対面して、また詳しく美音先生の人柄を聞かせてもらい盛り上がっていた。  そんな柚希の隣の席には、姉の百花が。そしてその向こうには館野三佐が向き合っていた。ついに同期生がひさびさのご対面、プライベートでのお喋りを始めたようだった。 「神楽、もしかして、痩せたんじゃないか」  目端が利く将馬さんのひとことに、姉が観念するように苦笑いを浮かべていた。 「ああ、やっぱりそう見える? いま訓練もないしさ、子育て甘く見ていたと思ってる。定期的な長期演習も大変だけど、それに匹敵するよ」 「あー、わかるな、それ。寿々花も出産後しばらく大変だったんだ。俺も家に居れば協力は出来るんだけれど。俺たち、そうじゃないだろう。そこが申し訳なくて……」 「うん、わかるよ。私は逆に自分も夫も自衛官だから、東の負担になりたくなくて背負い込んじゃったんだよね」 「自衛官同士、だからか……。なるほど。互いがわかりすぎて、気遣いしすぎたのか」 「東と大喧嘩してさ。妹夫妻と芹菜ママが居なかったら、乗り越えられなかったと……。里帰り出産なしだったら、私、自衛官辞めていたと思う」  さすがの館野三佐も黙り込んだ。  そしてビールグラス片手に、そのグラスを揺らして、思い巡っている横顔を見せている。 「俺も……。岳人君がいなかったら、寿々花ひとりに押し付けざるえなかったと思うとゾッとしたもんだよ。こういってはあれだけど……。拓人の生みの母親が、自衛官の妻になることに負担を感じて逃げ出してしまったのは仕方がなかったかと、納得したほど。ついでに、寿々花の実家が真駒内にあってお義母さんがいてくれた幸運もあってなんとか乗り越えている。でなければ……。やはり、女性が辞めることになってしまうんだな……。寿々花もいつまで音楽隊を続けられるか自信がないとよく言っている」 「幼児期の子育ては母親に比重がのしかかってくるからね。男性で代われるところは工夫してなんとかなるけれど、全部が全部じゃないから。自衛官の奥さんたちも、その覚悟があっての結婚になるのは仕方ないところもあるよね」
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