⑨同期の疎通

2/9
前へ
/916ページ
次へ
「でもさ。それって『婿殿の立場を利用する』ってことでしょ。いいの!?」 「そんなのうまくやるさ。『あの時のように』。まっすぐだけじゃ、正義は貫けない。正義を守るならギリギリを攻める覚悟を持て。それが俺の信条。そうだろ。モモタロウ。守りたいもの守るなら俺は厭わない。今回の俺の正義は『ママでも自衛官』だ」  おそらく、館野三佐と百花姉は『似ている』と柚希は思っている。  まっすぐで正義感が強い。曲がったことは許せない。そんなことなら自分が切り込んで正す。たとえ自分が不利になっても、理不尽に我慢するぐらいなら突撃する。違うのは……。姉は若干見切り発車気味で、館野三佐は用意周到というのだろうか?  なので百花姉は、『俺の正義は使えるものは使って守り切ること』という、時には好まれない手段も選ぶという主義に最後は頷いていた。 「そうだった。あの時、私を助けてくれたのも、館野君が裏で用意周到に上官を動かしてくれていたからだよね」 「まあ、察知していたから。そのうちにモモタロウが切り込み隊長で、先輩たちに歯向かうだろうから、その時かな~とタイミングは合わせていたかな」  柚希が知らない『鬼退治』の時のことだろうかと、黙って聞き耳を立てていた。岳人パパがもう既に知っているようで『なんのこと聞きたい』とも言いださず、こちらも同期ふたりの思い出だからと黙っている。 「いまもなくならないようで、悔しいね。私のところには、若い女の子から、未だに相談があってなくならない。まあ、私も、父が教官をしていた後ろ盾があって、守られた立場だったんだけどさ……」 「俺たちの代でなんとか緩和したいとは思っているよ」
/916ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5113人が本棚に入れています
本棚に追加